こわいけどほんとうのおはなし

ひょんひょろさんは、休みぼけの頭をなんとかゆさぶりながら仕事をしていました。
すると突然、「ぜいきんをはらわないとおこっちゃうよカード」が現れ、
おろおろする暇もなく、ひょんひょろさんにおそいかかりました。
そしてあっというまに、そのカードは「チョイノリが2台買えるぐらいのおぜぜ」を吸い取っていきました…。
「うわあ〜〜」
ひょんひょろさんは叫びましたが、じゅんいちさんも、ふさえちゃんも、何もこたえてくれませんでした。


ひょんひょろさんは、とほうにくれました。
「いえにかえったら、おくさんになんていおう」
れいぼうがきいた会社のなかにいるのに、ねばりけのあるいやな汗がどんどんでてきました。
休みぼけの頭はすっかり覚めてしまいましたが、仕事にはぜんぜん集中できません。
なんとか仕事を終わらせて家に帰るとちゅうも、ずっとそのことばかり考えていました。
こういう時は、いつもは長いつうきん時間もとてもみじかく感じます。
ひょんひょろさんは、ただでさえ少ししかないゆうきをふりしぼって、家へとむかいました。


そして家につくと、
「おかえり〜」
おくさんは、いつものように笑顔でむかえてくれました。
ひょんひょろさんは、思いきって話しはじめました。
「じつは…かくかくしかじか」








……意外でした。
ひょんひょろさんはてっきり、青白いほのおをたゆたわせながらみっちり怒られて、
1週間は口を聞いてもらえないんだろうなあ、とかくごしていました。
おくさんは、ぎんこうの「おぜぜうけとりましたよカード」を見て少し固まったあと、
いつもとそれほどかわらずに
「きょうのごはんは、オムライスですよ」
と言ったのです。
ひょんひょろさんは予想してなかったはんのうに少し怖くなって、
「これは、どくしんの頃にはらうはずだったぜいきんだから、
ぼくこじんのしゃっきんとして考えてほしいんだ。
だから今月からおこずかいの半分ずつを毎月へんさいします。
それと、いまあるこぜにちょきんも全部わたします」
と言いました。


おくさんはそれをきいて、
「うん、ありがとう。たすかるわ」
と、えがおで答えてくれました。
そしてひょんひょろさんは、とてもうれしくおもいました。


え?おこずかいの半分もわたすのに、うれしいはずがないだろうだって?


いや、ここで「それはいらないわ」と答えられると、
逆に気持ちてきにはずっとずっと辛くなるところでしたから、
ひょんひょろさんはおくさんにかんしゃして、
とってもうれしくおもったのです。
おとなって、ふしぎですね。


そんなこんなでひょんひょろさんは、
「がんばってはたらいて(ちょっとだけやふおくとかもりようして)おくさんにかえそう」
とおもいましたとさ。




こわかったけど、ほんとうのおはなし。










そうそう、このおはなしにはつづきがあるんです。
このあとひょんひょろさんとおくさんは、オムライスをたべました。
すると、オムライスの味がいつもとちがうのに気がつきました。
おくさんは、あまいたまごやきが大好きなのに、
このオムライスのたまごやきは、ひどくしょっぱいのです。
ひょんひょろさんはどちらの味も好きなのですが、
なぜ?とおくさんに聞いてみると…
「あまりのショックで、おさとうとしおを間違えた…」




これもまた、ほんとうのおはなし。


とっぴんぱらりのぷう。