妄想小説

プリントアウト待ち中にこんなものを書いてしまった。もったいないのでうぷる。推敲なんてもんはしてねえぜ。

5月X日、JFAより「緊急記者会見」のFAXが各マスコミの元に届けられた。

100人を越える報道陣、彼らの目の前にはアディタスとキリンのロゴが格子状に並んでいる。しばらくすると、壇上に川淵、平田、田嶋の3人が強ばった顔つきで登場する。しかし、中央の席は空席のままだ。
カメラのフラッシュ音だけが鳴り響く数分間が過ぎ、固い表情の川淵が口を開く。
「本日はお忙しい中、お集まりいただいて有り難うございます。えー、現日本代表・A代表の監督であるジーコ氏より、健康上の理由により監督を辞任したいとの申し出がありました」
ざわ…。ざわ…。
フラッシュ音の束がより一層強く、間隔も短くなる。
「私どもと致しましても、慰留を続けて参りました。しかし本人の意思、及び予選における試合内容、そしてこのたびの欧州遠征の結果を踏まえた上で、残念ではありますが申し出を受ける事に致しました。ただし、この様な結果になった現在においても、日本サッカー界に多大なる貢献を果たしたジーコ氏に対する感謝と尊敬の念は、これからも変わることはありません」
息継ぎをしていないかの様な早口で、川淵がまくしたてた。
「次期監督は決定しているのですか?」
一人の記者がフライング気味に問いかける。川淵はその記者に冷たい眼差しを向け、言った。
「その件は、田嶋より」
田嶋がそれを受けて、話し始めた。
ジーコ氏が辞任の意志を表明されたのを受け、私ども強化委員会と致しましても、後任人事のリストアップを進めてまいりました。人事は困難を極めましたが、無事決定に至りましたので、急ではございますが同時に発表させて頂きたいと思います」
田嶋の話が終わるか終わらないかのその時、一人の大柄な老人が壇上に姿を現した。
「ワシや」
190cmは優に越えているだろうか。猛禽類の様な顔をした老人だった。彼は一本の太い木の棒を携え、先程まで空席だった中央の席に、ドカッと腰を下ろした。
サッカー日本代表新監督、金田正一氏です」
田嶋の紹介に、にやり、と金田は笑った。
ジーコだか何だか知らんけどなぁ、ソイツは何勝しとんのや? まあ、ワシゃサッカーの事はよお分からんけど、とにかく走って、走っといたらエエんや。スポーツやねんからそこは一緒やろ。あとはこの金田式健康棒があれば400勝や」
ぶん、と金田は手に持った棒を振り回した。棒が平田の頭をかすめる。
田嶋が首を竦(すく)めながら話を続けた。
「なお、新監督の強い希望によりまして、コーチ陣も一新いたします。ヘッド兼GKキャッチングコーチに達川光男氏、守備・フリーランニングコーチに福本豊氏、マスコットボーイに衣笠祥雄氏です」
その声と共に、ジャージ姿の3人が姿を現した。


続く…のか?